亡くなった人が所有していた不動産物件を相続する場合、相続税価格を算出するための土地の評価額を定めた「相続税路線価」というものがあります。これは「路線価」などと略されて利用される事も多く、過去に聞いた事がある人も少なくないはずです。相続税を定める際の土地評価に利用し、相続財産つまり遺産総額の評価額を表すための基準となります。
相続税路線価(路線価)とは
と路線価という存在を知っていても、実際には土地の相続が生じた際にしか利用することがありません。そのため計算方法だけでなく、相続税を割り出すためにはどうすれば良いのか、路線価はどこで知る事ができるかと路線価自体の見方も知らないという人が多いでしょう。
路線価とは亡くなった人、つまり被相続人が所有する土地を評価する場合、基準価格として利用する価格をいいます。相続税を算出するためには、まず被相続人が所持していた相続対象となる財産の価値を調べる必要があります。これは相続税を算出する際に、必要不可欠なものです。
路線価は、一般に公開されている情報なため、実際に相続を受ける以外の人であっても見ることができます。
相続税路線価(路線価)確認方法
路線価として評価された情報は、国税庁により発表されています。その確認は、国税庁や税務署で確認することもできるため、質問などがある場合は直接確認を行うと良いでしょう。しかし、路線価のみを知りたいのであれば、Webでの確認の方が容易です。
国税庁のHPで路線価が公開されています。
参照URL: 国税庁「財産評価基準所 路線価図・評価倍率表」
相続税路線価(路線価)の発表時期
路線価は実際の不動産取引を参考に、毎年7月頃に新しい情報に変更され発表されます。相続税の申告が路線価の発表をまたいだ場合、古い路線価と新しい路線価のどちらを使うか疑問に思う人もいます。これは「被相続人の死亡年度のもの」を利用します。
例えば、平成28年11月23日死亡の場合、すでに発表されている平成28年度の路線価を使用します。平成29年01月10日死亡の場合、死亡年度の平成29年度として7月に発表される路線価を使用します。
このように亡くなった年度に依存するため、1月1日以降から新路線価発表までの間に亡くなった場合、7月の路線価発表まで相続税申告を待つ必要性が出てきます。
相続税路線価(路線価)が定められていない場合
主要市街地であれば多くの場所で路線価が設定されています。しかし全ての道路で路線価が設定されている訳ではなく、地方や居住性の低い土地など路線価が設定されていない場所もあります。その場合「倍率方式」と言われる評価方法を利用し、路線価を定めます。
倍率方式とは、1月1日に市町村で決定する固定資産税評価額に国税庁が定めた倍率をかけて計算を行います。
倍率の数値は、路線価と同じように国税庁のHPで確認を行って下さい。
参照URL: 国税庁「財産評価基準所 路線価図・評価倍率表」
相続税路線価(路線価)の見方
路線価図を参照としながら、路線価を計算します。
- 路線価図から、まずは調べたい住所の土地が何処にあるか探す
- 探し出した土地が面している道路がどこであるかを確認する
- 面している道路に定められた路線価に、調べたい土地の広さ(平方メートル)をかける
- 借地の場合、路線価図の上部にある表に記載されている数値の後にあるアルファベットに該当する%をかける
相続税路線価(路線価)の計算方法
路線価図で住所が何処にあるか確認します。ですが、路線価図では番地までしか表示されておらず、土地の番地が判らない場合があります。その場合はGoogleマップを利用するなどして、正確な位置情報を確認する必要があります。
土地が面している道路の書かれた数字とアルファベット、例えば「580C」などで道路に表示されています。この「580」と言う数字は、千単位で平方メートルあたりの土地価格を表します。そのため「580」と書かれていれば、580千円、つまり58万円という事になります。
平方メートルあたりの単価58万円の土地が100平方メートルある場合には、58万円×100平方メートルで5,800万円となります。この5,800万円が、土地の相続税路線価の評価額ですが、実際には補正などで価格が前後する場合があります。
借地権割合
相続税には土地だけではなく、借地権も含まれます。
借地権とは、自己所有の建物を建築するなどで、他人の土地を有償で借りる権利を得る事です。借地権という権利自体が財産として扱われ、相続が生じた場合に課税対象として扱われます。相続を行う土地が借地権の場合、路線価の価格に借地権割合をかけた数値が評価額となります。
路線価「580C」の土地に面する100平方メートルの土地が借地権である場合、路線価図の上部の表に「580C」のCの部分の「%」が表示されています。
仮にCの部分が70%であった場合「58万円×100平方メートル×70%=4,060万円」となります。
この4,060万円が土地評価として評価されるのです。
複数の道路に面している場合の相続税路線価(路線価)
土地が複数の道路に面しているため、路線価が複数ある場合には評価の高い方の路線価を使用します。その際には、さまざまな要素を考慮して正確な評価額を計算するため、専門家に相談することをおすすめします。
一物四価とは
土地には相続税の時に利用する相続税路線価以外にも価格がついています。1つの土地に対し、使用用途によって異なった価格が4つ存在するため「一物四価」と言われています。
この一物四価には、売買取引の時価である実勢価格、公示価格、相続税評価額いわゆる路線価と固定資産税評価額の4つです。このように複数の価格が存在する理由は、「国」「地方自治体」「売主」「買主」による視点、さまざまな目的によって価格を評価しているためです。
実勢価格(売買取引の時価)
実際に土地を売買取引する時に利用される相場価格を言います。一般的には実勢価格の方が、路線価より高く評価されていることがほとんどです。しかし、土地の価格が下落し続けている地域などでは評価額が逆転することもあります。
公示価格
国土交通省によって公表される土地、つまり地価公示標準地の価格を言います。元々の利用方法は、公共事業用地の取得価格算定の規準でした。しかし、それが転じ一般の土地を売買する際の、取引価格の指標としての意味を持ち始めたのです。現在では、土地の適正な価格の判断材料として、客観的な相場として利用されています。
固定資産税評価額
市町村などの自治体により公表される土地の価格を言います。
固定資産税を初め、不動産取得税や登録免許税などの土地と家屋に関わる税金の基準として利用されています。相続税評価額を算出する際に、土地は路線価で計算します。しかし、建物部分の相続税評価額に関しては、固定資産税評価額が利用されます。
まとめ
相続税路線価、つまり路線価の評価額の算出は、実際には単純に数字をかければ良いというものではありません。実際にはさまざまな要素が加味されるため、税金のプロである税理士・相続登記に関わる司法書士であっても評価方法を知らない事が多くあります。税理士や司法書士の中でも相続に特化しているという人は、非常に少ないです。そのため、税理士や司法書士に依頼すれば大丈夫と安易に任せてしまうことで、高い相続税を支払う結果になることもあります。
特に土地や建物などの不動産相続は、大きな金額となるため正確な評価が必要です。土地の評価を自分だけで判断せず、相続に精通している専門家に相談することが一番の相続税対策につながります。