マンションの相続や譲渡を自分で行う方法と注意点

マンションの譲渡は、不動産の売買・贈与・交換などさまざまな方法で行われます。相続とは、人が亡くなった際に一定の親族関係にある相続人が財産を受け継ぐ事です。このような取引で不動産を得たとき、本来であれば登記のプロである司法書士に依頼するのが一般的です。しかし、これらの手続きを個人で処理する事ができる事をご存知でしょうか。

マンション譲渡の一般的な作業の流れ

相続などの譲渡による名義変更、つまり相続登記・所有権移転登記は、最終的に法務局、いわゆる登記所での申請手続きとなります。法務局へ申請する前に、さまざまな書類の収集・作成などの事前準備が必要です。

マンション調査 

名義変更の対象となるマンションの確認

相続調査

戸籍謄本などで相続人を調べる

マンション譲渡のための書類収集

住民票等の書類収集

マンション譲渡のための書類作成

収集した書類を参考に、書類を作成する

分割協議  

遺産分割協議を作成して署名押印

マンションの相続登記書類を提出

書類が揃ったら法務局へ申請

マンション調査

マンションの名義変更を行うには、物件の登記簿上の状態を調べる必要があります。また物件調査は、書類作成の際にも必要な作業です。名義変更の対象となる「土地・建物の登記事項証明書」を取得しましょう。名義上の住所と現住所、氏名などが一致している事が重要です。売買や贈与などによる名義変更の場合は、登記簿上の住所を現住所に登記しなおす必要性があります。

しかし相続による場合には、登記簿上の住所と非相続人の最後の住所が異なっている場合でもそのまま登記が行えます。

登記事項証明書(登記簿謄本)

法務局では登記事項証明書が発行されます。登記事項証明書とは「地番」「地積」「所有者」「担保」などに関する事が記載されています。

被相続人の住所が変更していた場合の注意点

登記簿上の住所変更を行う必要はありません。しかし相続登記、つまり名義変更を行う際には、被相続人の住所移転の経緯を証明する書類が必要となります。これは登記簿に記載されている住所から、最後の住所に至る全ての住所の繋がりを示す書類です。

それを住民票の除票や、戸籍の除籍などの附票と言います。

保存期間の経過を終えていた場合の注意点

住民票の除票や戸籍の除籍は、5年が経過すると保存期間経過のため破棄されます。こうなると登記簿上の住所と被相続人の住所のつながりを証明する事ができません。その場合「不在籍証明書」「不在証明書」「登記済権利証」「相続人全員の証明書」を提出することで相続登記ができます。

相続調査と戸籍謄本の取得

故人が遺言書を残していなかった場合、法定相続人全員の手続きが必要です。法定相続人とは、法律で決定した相続人をいいます。

相続登記を行うためには、法定相続人には、誰がいるかを確認する必要があります。相続関係は、戸籍謄本、つまり除籍謄本・改製原戸籍で判明する事ができます。まずは、故人の本籍地の市区町村で戸籍謄本を取得しましょう。

最終的には、故人の出生に遡る全ての戸籍謄本が必要です。結婚前に親の戸籍に入っていた場合や、さらに上の代の戸籍謄本、生まれた時の戸籍まで遡ることになります。

戸籍謄本などの種類

戸籍謄本

故人の本籍地の市町村

改製原戸籍

戸籍法が改正され、変更と書き替えが行われる前の戸籍

除籍謄本

婚姻、離婚、死亡、転籍などにより、戸籍に記載された全員がいなくなった状態の戸籍

戸籍の附票

該当市区町村に本籍がある者の住所履歴に関する記録

相続調査の注意点

戸籍に関する書類を全て1通ずつ準備する必要はありません。人によって、除籍謄本も改製謄本も複数必要になります。書類の名前を重視せず、「出生から死亡までの戸籍謄本」として請求するのが良いでしょう。

戸籍謄本には住所が記載されていません。

相続人調査を行うにも、戸籍謄本の解読はとても難解です。人によって、誕生から死亡まで同じ市町村に本籍を置いている場合もありますが、結婚や住所移転に伴い本籍地を変更する場合もあるからです。その場合、最後の本籍地から順に戸籍謄本を取得し追跡することになります。

遠方の役所への戸籍謄本の取得は郵送でも行えます。しかし、書類を送る他に郵便局で小為替の用意が必要です。

マンション譲渡のための書類収集

被相続人の誕生から死亡までの戸籍謄本以外でも、取得収集が必要な書類があります。

  • 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続人全員の住民票
  • 不動産の固定資産評価証明書
  • 不動産の全部事項証明書

自身で手続きする場合は、法務局にある相談窓口を利用すると良いです。法務局へ持参し相談することで、書類の不足などがわかります。

マンション譲渡のための書類作成

役所で収集する書類だけではなく、作成が必要となる書類があります。

  • 遺産分割協議書
  • 相続関係説明図等
  • 登記申請書

この三つの書類は、任意で作成する書類です。遺産分割協議書の雛形や見本は、ウェブ上や書籍に掲載されています。利用の際には、自身の手続きに合う内容の遺産分割協議書が必要となるため、注意が必要です。また、相続人に何度も押印を得る事が困難になる場合があるため、最初に確実な書類の準備が必要になります。

遺産分割協議

遺言書のない被相続人のマンション名義を変える為には、相続人全員で話し合いを行い、名義変更を誰にするかを決める必要があります。相続人全員で話し合うことを遺産分割協議といいます。

遺産相続により、取得したマンションの名義を変更するには遺産分割協議は、手紙や電話、メールでも行えます。相続人の1人により作成された遺産分割協議書を、他の相続人が了承するという形でも構いません。

遺産分割協議書を作成する際の注意点

遺産分割協議が成立と共に作成される遺産分割協議書には2つの注意が必要です。

相続人全員で協議したという文言の記載と、不動産についての記載には「登記事項証明書」を書き写す事の2つです。

この2点を書き損じることで、遺産分割協議書が無効と判断されてしまいます。この場合、マンションの名義変更ができなくなる可能性があります。

マンションの相続登記申請書を提出

相続登記申請書とは、法務局に不動産の名義変更を申請する書類を言います。法務局で入手できる相続登記申請書のひな型を参考に作成するのが、手近な方法です。

法務局の相続登記の申請書からダウンロード入手できます。

参照URL: 不動産登記の申請書様式について

相続登記申請書の作成方法

  1. 申請書はA4の用紙に記載
  2. お手本を見ながらパソコンで作成、もしくは摩擦等で消えることのない黒色ボールペンで記入し作成
  3. 申請書が複数枚となる場合、各用紙の綴り目に必ず契印が必要
  4. 登録免許税は、用紙に収入印紙(割印は行わない)を貼り付けたものを準備
  5. 相続登記の申請書と他の添付書類と共に左綴じで行う

相続登記申請書を作成し法務局へ提出すれば、マンションの相続登記申請は完了します。申請先の法務局は事前に調べ、間違えずに届出を行いましょう。書類を提出してから約1~2週間後に新しい権利証が発行されます。この権利証の受け取りにより、マンションの相続登記を終えた事になります。

マンションの相続や譲渡には、書類の収集・作成が難しいだけでなく、関係する人達の心理面的に困難な面が多いです。司法書士に依頼する事で、譲渡に必要な書類作成は「署名」「押印」のみで行う事ができます。

自分で行うのが無理だと感じた際には、早い段階で司法書士へ依頼すると良いでしょう。