一般・専任・専属専任媒介契約それぞれの違いやデメリット

不動産の売買を不動産業者に依頼するときに「媒介契約書」というものが交わされます。媒介契約書とは、不動産の売買・賃貸契約の成立に向けた条件を顧客と不動産業者の間で決定する契約書です。

トラブル防止を目的とし、サービス提供の種類、仲介手数料などを明確にします。仲介を行う不動産業者は、法的に媒介契約の締結が義務づけられています。

一般・専任・専属専任媒介契約の比較ポイント

媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。この3種類の契約は制度や度合いが違ってくるため、媒介契約の中身を理解し、納得したうえでの契約が必要です。

比較ポイントは5つあり、一般→専任→専属専任の順で業者への依存度が高くなっていきます。そして依存度が高いほど、1社による徹底したサポートが行われます。

1.顧客が売買契約の相手を直接探し、直接契約をする事への可否

不動産の個人売買を行うことで、仲介手数料は不要になります。そのため、不動産業者を通さず直接契約での不動産売買を行う人もいます。しかし、個人売買にはデメリットもあるため、容易とは言えません。

  • 買主を自分で探す必要がある
  • 売買後の瑕疵担保責任など、トラブルの対応を個人で行う必要がある
  • 売買契約書や重要事項説明書の書類を自分で作成する必要がある

親子間・親類間、隣家、知人など、親しい間柄で、トラブル対応も折り合いが付けやすい取引相手であれば問題はありません。大きな金銭が動くだけに個人での売買はリスクが高いでしょう。

2.複数の不動産業者への依頼の可否

複数業者への依頼を行うことで、売却先の窓口が増え多くの不動産業者に顧客を探してもらえます。

3.レインズの登録義務

レインズとは全国を対象にした、不動産流通情報システムです。このシステムへの登録・検索をすることで広く迅速に情報を伝え、情報を得られます。取引状況の変更には最大2日間かかります。

媒介契約の解約、掲載期間の満了、契約制約により閲覧できなくなります。

4.レインズの閲覧の可否

レインズに登録された物件情報は、誰でも閲覧できる訳ではありません。媒介契約の種類が閲覧条件になります。IDとパスワードは媒介契約を締結した不動産業者から提供されます。

5.不動産業者から顧客に対する報告頻度

媒介契約によって報告義務は大きく変化します。報告する内容は「問い合わせ件数」「販売促進活動の現状と予定」「見込み情報」「見込み客との進捗状況」が一般的です。

これらの報告方法は、面談・電話・メール等と顧客の希望にそった業務報告になっています。

一般媒介契約の特徴とメリット・デメリット

まずは一般媒介契約の特徴を見ていきましょう。一般媒介契約は、依頼をしている不動産業者を公開する「明示型」と、依頼している不動産業者を知らせない「非明示型」があります。

複数の不動産業者を顧客が管理するため、内覧の日程調整や準備も顧客の仕事となります。

  • 自分で探した相手との直接契約:○(できる)
  • 他業者への販売依頼:○(できる)
  • レインズの登録義務:×(業者の任意)
  • レインズの閲覧:×(できない)
  • 報告義務と頻度:×(業者の任意)

メリット

複数の不動産業者を利用することで、業者間同士が監視状態になるため緊張感が生まれます。条件の良い物件であるほど、競争意識が強く働き売買成立が早く達成できます。

デメリット

条件の悪い物件であるほど、デメリットが際立ってしまいます。不動産業者側は「自社での売却・購入は厳しいが、他の不動産業者がなんとかしてくれるだろう」と、責任の放棄へと繋がります。必ず自社で販売する、利益を得ると決まっていないため、広告宣伝なども積極的に行われません。

また多くの業者にまたがり宣伝されることで、逆に不人気物件と認識されることもあります。

媒介契約の種類を決めるのは顧客ですが、不動産業者は媒介契約の説明と同時に希望の媒介契約をすすめてくることもあります。もし、業者から一般媒介契約をすすめられたなら「条件の悪い物件」と思われていると考えた方が良いでしょう。

専任媒介契約の特徴とメリット・デメリット

専任媒介契約は、1社の不動産業者に売買活動を任せる契約形態です。契約期間の基本は3ヶ月で、その間は他の不動産業者に依頼できません。また、その期間終了後の「契約更新」「契約終了」は顧客によって決定するため、自動更新ではありません。

  • 自分で探した相手との直接契約:○(できる)
  • 他業者への販売依頼:×(できない)
  • レインズの登録義務:○(契約日から7日以内の登録)
  • レインズの閲覧:○(平成28年1月1日以降に登録された物件はIDとパスワードが付与されます)
  • 報告義務と頻度:○(2週間に1回以上)

メリット

他社との競争がなく、全力で売買契約成立に働きかけるため、広告や経費を十分にかけ、力を尽くしてくれます。2週間に1度の報告義務により態度や営業内容を知ることができるため、契約の更新・終了の判断への材料になります。

自己発見取引ができるため、親戚・知人などと取引をしたい場合には不動産業者を通さず取引が行えます。

デメリット

3ヶ月の媒介契約に縛られるため、条件の良い顧客を持つ不動産業者がいたとしても依頼をすることができません。

専属専任媒介契約の特徴とメリット・デメリット

全ての不動産取引を1社に任せるため、自分で売買契約の相手を探すことは禁止されています。顧客に対する義務は、専任媒介契約よりも厳しくなっています。

契約期間は、専任媒介契約同様3ヶ月で、それ以降は顧客からの「更新」「終了」の決定に従い、自動更新は行いません。

  • 自分で探した相手との直接契約:×(できる)
  • 他業者への販売依頼:×(できない)
  • レインズの登録義務:○(契約日から5日以内の登録)
  • レインズの閲覧:○(平成28年1月1日以降に登録された物件はIDとパスワードが付与されます)
  • 報告義務と頻度:○(1週間に1回以上)

メリット

売り出し活動は1社で独占状態なため、不動産業者は安心して販売活動を積極的に行います。報告義務が頻繁であることから、物件への問い合わせ状態や担当者の活動状況がわかります。

それらの情報から、物件の人気と周辺状況を知ることができ、早期取引に活かせます。契約終了後には、他の不動産業者と契約を行うことができます。

デメリット

親戚・知人などとの売買契約が成立した場合でも、契約期間中である場合は不動産業者を通す必要があります。これに違反した場合は、違約金を請求されることもあります。実力のある不動産業者を見つけたとしても3ヶ月の間は契約により、不動産業者を変更できません。

不動産業者は不動産売買を独占して行えるため、専属専任媒介契約での契約を希望します。

相場からかけ離れた価格での査定を顧客に提示し、媒介契約を締結することがあります。その後、不動産業者にとって有利な価格に理由をつけて変更させる場合がありますので注意しましょう。

売主・買主の双方が自社顧客で完結が容易である場合にこの契約を不動産業者側から希望します。決定権は、顧客にあるため断ることもできます。

真剣に対応・営業活動をしてくれない不動産業者と契約してしまった場合、3ヶ月の間は時間の無駄です。反面、信頼できる不動産業者や担当者を見つけてしまえば、後は全て業者に任せてしまえます。

不動産業者の選択によっては、大きな差が出てしまいます。媒介契約を行う前に複数の不動産業者の中から、より良い不動産業者を選ぶ必要があります。