賃貸経営で必要な書類や登記とランニングコスト

マンションやアパートを初めとする賃貸経営における主目的は「物件に対し収入を得る」ことにあります。しかし、それだけで経営が成り立つという訳ではありません。

物件を所有した後にかかる費用、ローン金利・管理・維持費・税金、それらランニングコストを常に視野に入れた経営戦略を行って、初めて賃貸経営の成功に繋がります。

賃貸経営に必要な書類と費用

賃貸経営に必要な書類・手続きは、実際直面して初めて準備を行うという人が多いでしょう。面倒だと考え後回しにしてしまっては、容易な手続きであっても必要以上に苦労をすることがあります。事前に必要な手順や書類を把握することで、二度手間やトラブルを回避しスムーズに賃貸経営を開始できます。

物件を購入する際に必要な書類と費用

マンションを賃貸用に購入する場合、ローンを組む人が多いです。分譲マンションの一戸だけを購入する場合であっても、数百万から数千万円とかかります。また、マンションを一棟購入する場合には、より多くの費用が必要です。このように大きな金額をローン借り入れで準備するためには、購入時にさまざまな書類が必要となります。

必要な書類・費用は、1棟の場合と区分所有、つまり分譲マンションなどの場合では、借入れ金額に比例した費用の変化があるだけで、書類に関しては大きな違いはありません。

売買契約書締結時
  • 実印・認印:売却主との書類は実印使用、その他のやりとりは認印使用
  • 本人確認書類:運転免許証など顔写真のついた身分証明書
  • 印紙代:売買契約金額により変化
  • 委任状:契約主が契約に立会えない場合
  • 委任者の印鑑証明:正式な文章であることを証明するため委任状に添付
融資審査時・融資時
  • 事前審査打診表:融資申込書 金融機関ごとに変化
  • 身分証明書:顔写真のついた運転免許証などの本人証明書類
  • 住民票(1通300円 市役所):家族全員の記載があり、発行から3ヵ月以内のもの
  • 源泉徴収票3年分:年末に勤務先からもらう年末調整の結果表
  • 住民税課税証明書3年分(300円 市役所)
  • 納税証明書3年分(300~400円 市役所)
  • 確定申告3年分のコピー:複数から収入があり、確定申告を行っている場合
  • すでに借入れがある場合の返済予定表:住宅ローン、自動車ローンなど
  • 購入物件の資料、購入物件の収支シミュレーション資料
  • 売買契約書、重要事項説明書、賃貸借説明書などそれぞれのコピー
  • ローン事務手数料:借入れに必要な事務費用
  • ローン保証料:ローン返済が行えない際に、保証協会で肩代わり
  • 火災保険料:火災により購入物件が担保価値を失った場合に下りる保険
名義変更時
  • 実印、認印
  • 本人確認書類
  • 印鑑証明(1通300円 市役所)
  • 住民票(1通300円 市役所)
  • 通帳と印鑑
  • 区分所有変更届:所有者の変更を管理組合に届ける書類で、区分所有物件の購入の場合

不動産決済時にかかる費用

不動産決済時にかかる費用は以下です。

  • 土地・建物費用
  • 建物部分の消費税
  • 印紙税
  • 不動産仲介手数料(400万円超の場合、3%+6万円に消費税)
  • 所有権移転登記(固定資産税評価額×1%+司法書士手数料)
  • 抵当権の設定(債権額×0.4%+司法書士手数料)
  • 不動産所得税(土地:固定資産税評価額×1/2×3%)
  • 不動産所得税(建物:固定資産税評価額×3%)

1棟マンション購入と区分所有(分譲マンション)での登記の違い

同じマンションの売買であっても1棟まるごと購入する場合と、区分所有の場合では登記上大きな違いがあります。1棟購入の場合、土地と建物をセットで購入し別々に登記が行われます。

しかし区分所有、つまり分譲マンションの場合は、建物部分を一戸ごとに売却します。そのため購入者は、建物の専用部分と敷地利用権、いわゆる敷地権をセットで購入し別々に登記を行います。敷地利用権とは建物の専用部分に対する敷地の権利を言います。

土地500平方メートルの上に20戸のマンションが建っている場合、分譲マンションを1戸購入することで20分の1となります。

所有している土地の場所が明確ではないものの、マンションが建築されている土地の20分の1を所有していることになります。

開業届の申請

賃貸経営を行う場合、1棟であっても一戸ごとであっても規模に関係なく確定申告を行う必要があります。開業届を出すことにおいて税制上優遇措置を受ける事ができるのです。一般的に「青色申告」と呼ばれている確定申告です。

青色申告は開業届と同時に、申請を行う事ができます。青色申請は白色申請と違い、年間の所得総額から一定額を控除できる特徴を持っています。支払う所得税が大きい場合には、青色申告を利用することで大きな減額が期待できます。

また、賃貸経営に関係する経費を必要経費として申請できることも優位とされる理由です。

賃貸経営にかかるランニングコスト

手に入れた不動産物件を利用した賃貸経営を開始する際に、ローンの返済の他に必要な費用は多岐に渡ります。毎月の必要経費の他に長期的な経営を視野にいれた修繕費などのランニングコストも考えなければなりません。

修繕は、5年周期で備品修理と交換、5~10年周期で防水工事、10~15年周期で大規模修繕が必要です。マンション経営は、常に修繕と共にあると言えます。そのためにも、必要になってから資金を準備するのではなく、修繕を視野にいれた貯蓄が重要です。

1棟単位のランニングコスト

  • 共有スペース光熱費:エレベータ・廊下・階段など
  • 保険:建物全体に対する火災保険や地震保険など
  • 管理費:管理会社に入居者管理を依頼している場合(家賃収入の3~5%)
  • 仲介手数料:入居者が決定した場合、家賃の1ヵ月分
  • ローン金利:借入れ金額と金融機関によって変わる
  • 修繕費積立A:設備の劣化・故障、防水、建物の劣化に対する修繕費(家賃の10~15%ほど)
  • 定期点検:エレベータ、消防、受水槽などの点検・管理費用
  • 共用部分の清掃費:コストは各会社によって異なる
  • 固定資産税:固定資産税評価額×1.4%
  • 都市計画税:固定資産税評価額×0.3%

区分所有(分譲マンション一戸)のランニングコスト

  • 管理費
  • 仲介手数料
  • ローン金利
  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 修繕費用積立B:備品・設備などの経年劣化対策として(賃料の3~5%ほど)
  • 管理組合に支払う管理費・修繕積立金費用
    • 1棟単位と一戸単位のランニングコストの差は、一見共用部分の管理にあるように見えます。しかし、実際には管理組合に支払う管理費・修繕積立費用によって支払っているため、支出の分類は変わるものの一戸当たりの金額を比較した際には大きな変化はありません。

      まとめ

      賃貸物件の購入時にかかるコストは売買金額や評価額を基準としています。そのため、売買金額が抑えられれば自然と全体的な節約を行う事ができます。経営におけるランニングコストは、賃貸管理業者を見極めることでコスト抑制に繋がります。しかし、区分所有での賃貸経営では管理組合に管理されているために費用も管理方法も自由が効かないというデメリットがあります。

      1棟マンションの賃貸であるなら、自分でできる維持・管理・清掃を行う事でコストの抑制が行えます。また、自分の所有物件なので管理が適当になるということもなく、入居者の生活サイクルにあった要望なども取り入れやすいでしょう。所有マンションだからこそ入居率が下がったとき、管理規約にとらわれることなく対策を立てる事ができます。

      自分で直接マンション管理に参加しない場合であれば、賃貸の規模に関係なく賃貸管理業者の選択が最も重要です。手間を惜しむ事無く、複数の管理業者の中から最適な業者を選択してください。