不動産物件の価格には1つの物件に対して5種類あります。その5種類の違いは、どのような目的に使われるかによって変化します。
価格の付け方のほとんどは、過去に取引のあった周辺物件や類似物件から割り出されています。不動産物件を売却するときに、事前にその価格を知る事は物件の売却をする際に非常に優位になります。
周辺物件を基準とした実勢価格
実際の周辺物件の取引成約から得られる情報により出された「時価」や「相場」と言われる価格です。一般的に取引事例から情報を得て価格が算出されるため、実際の取引価格に最も近いです。しかし、不動産取引が少ない、類似物件が少ないなどの理由により精度が低下するのが弱点です。
不動産価格には、売主、買主の合意によって価格を決定する特徴があります。同じ土地でも「価値がある場所と感じ高額を付ける人」もいれば「価値がないと低い価格しかつけない人」がいるのです。このように取引価格も人により異なる価値を持っているため、これが正確だと言える厳密な価格は存在しません。
周辺物件から算出する相場
事故物件などの特別な事情を持たない、条件が似た不動産物件の取引情報を複数集めます。公平な取引であれば、条件の似た物件は、価格帯が一定の範囲内で取引されている事がわかります。同じ道路に隣接する同様な条件の不動産物件は、大きな価格差が現れる事はありません。
このように周辺の大まかな価格を参考に出されるものが、「簡易査定価格」「相場」と呼ばれる価格です。あくまでも相場なため、実際に不動産取引が行われる場合は価格が変動します。
実勢価格は、過去の取引情報を参考にするため、得られる情報の数が少ない場合、正確性に欠けるので、査定価格・土地の売り出し価格なども参考の材料にされます。
相場の算出のための情報収集には3つの方法があります。
土地総合情報システムを参考とした相場予測
国土交通省は、不動産の売買契約を成約した当事者を対象にアンケート調査を行います。集まったアンケート結果は集計され、土地総合情報システムを通して公開されます。情報元がアンケートなため、不動産の取引情報の全てを網羅している訳ではありません。
地域ごとの情報量に大きな差が現れるため、調べたい地域の情報が少ない場合は、別の方法も考慮し相場を予測する方が良いでしょう。
不動産業者による販売価格を参考とした相場予測
一般に得られる不動産物件の価格情報は、販売価格を主体としています。不動産業者により過去の成約取引価格が公開されている場合もあります。それらの情報を集め、目的の物件価格を推測する事はできます。
価格を調べるために情報を集めるなら、取り扱い物件の多い全国展開の大手不動産業者か、あるいは地域情報に特化した企業が提供する情報を元にするのも良いです。
しかし、他の物件価格が自分の調べたい物件と同じ価値を持ち、同じ価格、つまり坪単価とはなりません。また売買契約の成約時には、売主と買主の間で交渉が行われるため、売りだし価格よりも低い価格になる場合がほとんどです。
販売価格の利用は、ウェブ上で簡単に多くの情報を拾うことができ便利です。しかし、売主の希望が価格に反映するため正確性に欠けることが欠点です。
不動産業者に査定依頼を出す
不動産業者にとって不動産物件の「査定価格」「売却価格」の設定はとても重要です。不動産業者は、不特定多数の不動産購入希望者にとって魅力的と感じる物件の提供が必要です。
「立地」「建物」を取り巻く環境だけでなく「価格設定」によっても顧客の興味を左右します。これを上手く設定し売主・買主の双方が納得できる価格でなければ、不動産物件の売買成約にはたどり着けません。
不動産業者のほとんどは「不動産物件の査定評価」をサービスとして提供しています。不動産査定は一般的に無料で依頼ができます。また、査定をしたからと言って媒介契約を結ぶ必要もありません。そのため、複数の不動産業者に査定を行う事で、物件の売買取引価格を調べる事ができるのです。
これまでの方法は、他の物件の過去情報を参考にするのに対し、査定価格は知りたい土地を対象実地にされるので、個別の情報が反映されより精度の高い「相場」と言えます。不動産業者の査定には2種類の方法があります。
簡易査定という、「住所」「広さ」「前面道路」などの大まかな情報から査定を行う方法と、不動産業者が実際に現地へ訪れ、周辺環境も配慮し査定価格を算出する訪問査定という方法の2つです。
住宅の査定を行う場合には、「庭」「設備」「外装」「内装」「給排水管」「日照条件」「景観」など多くの条件により簡易査定と訪問査定に大きな価格差が現れます。
土地の査定は簡易査定の方が高精度、住宅の査定は訪問査定の方が高精度、という特徴があります。
そのため土地のみの査定の場合は、複数業者に簡易査定を頼み、比較相場を集めることで高い精度を持つ相場が算出できます。
公示地価から算出される価格
国土交通省が、基準地点の土地価格を年に1回公表する価格を言います。不動産市場で取引を行う際にも、参考にされる価格で公的指標として信頼できます。
知りたい土地に近い標準値を探し価格を調べる事で、相場が予測できます。しかし、基準となる場所1平方メートルと限定した地域の価格なため、補正が必要です。
また公示地価の発表は、毎年1月1日時点の地価が1回だけ公表され、翌年まで更新されません。そのため、実際の価格変動についていけないと言う欠点があります。
これらの価格は、不動産鑑定士が鑑定評価を行って、土地鑑定委員会が結果を審査し、調整します。調整を終えた価格が正常価格として公示されるのです。
公示地価は、周辺物件から相場算出した実勢価格の90%が目安とされています。
実勢価格の目安=公示地価÷0.9
相続税評価額
国税庁が、相続税の税額を決定するために好評する基本となる評価額をいいます。相続税評価額を求めると言う機会は少ないです。
相続税評価額は、誰でも相続税額を事前に推測できるように相続税路線価が公表されているのです。
路線価により評価を決める場合:路線価(1平方メートル)×面積(平方メートル)
倍率方式、つまり路線価が無い場合:固定資産税評価額 ×評価倍率
評価倍率については国税庁HPの「路線価図・評価倍率表」に情報が載っています。
参照URL:財産評価基準書|国税庁
相続税評価額は、周辺物件から相場算出された実勢価格の70~80%が目安とされています。
実勢価格の目安=相続税評価額÷0.8
固定資産税評価額
固定資産税は土地・建物に対して毎年課税される税金です。固定資産税評価額は、市区町村により税額を決める基準とするために好評される価格です。
- 固定資産税課税証明書:土地の納税義務者のみ取得できる
- 固定資産税台帳:土地の納税義務者・相続人・借地人・借家人が閲覧できる
- 固定資産税評価証明書:土地の納税義務者のみ取得できる
相続税評価額は、周辺物件から相場算出された実勢価格の60~70%が目安とされています。
実勢価格の目安=固定資産税評価額÷0.7
鑑定評価額
不動産鑑定士に不動産物件の評価を依頼することで、鑑定評価額という客観的な土地の価格が提示されます。鑑定評価には国土交通省が提供する鑑定評価基準を利用します。
不動産鑑定士により鑑定される不動産鑑定評価書は、公的機関に対し高い証明力を持っているのが特徴です。「公示地価」「基準地価」は、不動産鑑定士が算出した鑑定評価額を基準に作成されます。
不動産業者の価格査定:参考にできる土地価格
不動産鑑定士の鑑定評価額:合理的かつ適正な土地の価格
不動産鑑定士がつけた鑑定評価額と言っても、売主と買主の合意により売買価格が決定されます。不動産売買においては、鑑定評価額は目安としての価値しかないのです。
このような評価は不動産物件の売買価格そのものではありません。実際に売買を行う際に周辺環境や建物などにより大きく変更されます。
しかし、不動産業者の良し悪しの判断には重要と言えるため確認しておく事で優位な不動産取引が行えます。