母や父(親族)から相続や贈与されたマンションの売却方法と注意点

母や父などの親族からマンションを相続・贈与されたとします。相続されたときには相続税がかかりますし、贈与された場合には贈与税がかかることがあります。この税金も理解すべきですが、特に相続マンションの売却は軽減措置も理解しておきましょう。

その軽減措置を理解した上でマンションを売却すれば、数100万円の節税効果があるケースもあります。今回は、そんな相続・贈与されたマンションの売却方法や注意点について解説します。

相続したマンションの売却について

まずは相続されたマンションの売却についてです。マンションを相続されたときには、相続税が生じます。ただし、相続されたマンションを売却することで税制優遇があるので、その点を理解した上で売却しましょう。

マンションを相続する流れは以下の通りです。

  1. 法定相続人(相続される人)を確定させる
  2. 亡くなった人が遺言書を残していないかの確認
  3. 相続財産を確認する
  4. 遺言書がなく、相続人が複数人の場合、遺産分割協議書を作成
  5. 相続する財産の課税評価額を計算
  6. 相続税を申告して納税

マンションを相続したときは、上記のような流れになります。不動産の相続の場合には、相続税を納税して、「名義変更」をしなければ売却できません。

相続したマンションを売却するときの注意点

つづいて、本題である「相続したマンションを売却する際の注意点」です。そもそも前項で言ったように、相続税を納税して、名義が変更されているという前提になります。そのため、まだ名義変更、つまり相続登記をしていなければ、名義変更をしてからの売却になります。

相続したマンションの売却自体は、通常のマンションの売却時と同じ流れです。仲介してくれる不動産会社を見つけて、媒介契約を締結して売却活動をスタートさせるということです。

そして、相続したマンションを売却するときには、納税済みの相続税を譲渡所得に加味できる点を認識しておきましょう。譲渡所得に加味することができれば節税につながります。

相続税の取得費加算の特例

相続したマンションや不動産を売却するときには、「相続税の取得費加算の特例」という制度が利用できます。この特例は、相続した不動産を一定期間内に売却したとき、支払い済みの相続税を売却した不動産の「取得費」に加算することをいいます。

つまり、購入時の「取得費」に「納税した相続税」を加算することで譲渡所得額を下げ、その結果譲渡所得税の節税につながるということです。

この特例を受けるための条件は以下の通りです。

  • 相続などにより不動産を取得している
  • 不動産を相続しているときに相続税が生じ、納税している
  • 相続開始の翌日から3年以内に売却している

また、納税した相続税額が加算されるのではなく、以下の計算式で計算した金額が加算されます。

「取得費に加算する相続税額=相続税額(不動産の資産価値/相続税の課税価格)」

相続税の取得費加算の特例の計算実例

前項の特例の具体例です。仮に以下のマンションを相続したとします。

  • 相続税額:500万円
  • 資産価値:5,500万円
  • 課税価格:1,500万円

前項の式に当てはめると、「500万円×(5,500万円/1,500万円)=約1,833万円」なります。この金額を加算できるということです。

譲渡所得税の計算実例

では、実際に前項の特例を利用して「譲渡所得税の節税」を解説します。そもそも譲渡所得税とは、不動産を売却したときに利益、つまり所得が発生した際、その利益に課税される税金です。

譲渡所得の計算方法

譲渡所得の計算方法は、以下の計算式になります。

「(売却価格-売却時にかかった諸費用)―(購入時のマンション価格+購入時にかかった諸費用-減価償却費用))」

要は、単純に「売却額-購入額」ではなく、取得費や減価償却費が加味されるということです。上記の項目のうち、特に「減価償却費」の算出は難しいです。そのため、譲渡所得が生じるかどうかの計算は、マンション売却を依頼した不動産会社にお願いしましょう。

計算の実例

仮に以下のような条件でマンションを相続したとします。

  • 売却価格3,800万円、諸費用140万円
  • 購入時価格2,900万円、諸費用100万円、減価償却費350万円
  • 納税済税額250万円(資産価値3,500万円、課税価格1,700万円)

まずは、前項の「相続税の取得費加算の特例の計算」にて、加算できる税金額を計算します。加算できる税金額は「250万円×(3,500万円/1,700万円)=約514万円」になります。

つづいて、前項の計算式を利用して譲渡所得を計算します。計算すると「(3,800万円-140万円)-(2,900万円+100万円-350万円)=1,010万円」となります。つまり、本来であれば1,010万円の所得に対して譲渡所得税が課税されるということです。

この計算式に、さきほどの特例を加味すると「(3,800万円-140万円)-(2,900万円+100万円-350万円+加算額514万円)=496万円」となります。つまり、加算した514万円分がそのまま譲渡所得から引かれるので、譲渡所得税も軽減されるというわけです。

3,000万円の特別控除

相続したマンションを売却するときにも、「3,000万円の特別控除」が利用できる点は覚えておきましょう。この特例は、「譲渡所得を3,000万円控除する」という内容なので、前項の496万円の所得は全額控除されます。

全額控除されるということは、譲渡所得税がないということです。この特例は、相続不動産にも適用できます。この特例を利用できるかどうかで、譲渡所得税額が大きく変わりますので、売却前に必ず確認しましょう。

利用条件などの詳細については、国税庁ホームページを確認しましょう。

参考サイト: 国税庁ホームページ 「3,000万円の特別控除」

贈与されたマンションの売却について

贈与されたマンションの売却は、相続されたマンションと同様に、通常のマンション売却と同じ流れになります。ただし、以下の点に注意する必要があります。

  • 3,000万円の特別控除が利用できない
  • 贈与税がかかる

3,000万円の特別控除が利用できない

まず、贈与されたマンションは、基本的には上述した「3,000万円の特別控除」は利用できません。なぜなら、「自分が居住」しているわけではないからです。

つまり、贈与されたマンションを売却する場合には、譲渡所得税を支払う可能性があるということです。譲渡所得税の税率は高いので、場合によっては数100万円の税額になることもあります。

また、一時的に住民票を移してそのマンションに居住したことで、「3,000万円の特別控除」を受けるという方法も危険です。この特例を「受けるための転居」と見なされれば、特例を受けること自体できなくなってしまうからです。

贈与税がかかる

また、贈与されたマンションには、贈与税がかかります。贈与税の税率は高いため、そもそも贈与される際には必ず確認しておきましょう。

たとえば、1,500万円の課税評価額であるマンションを贈与したとします。1,500万円の課税評価額だと、「(1,500万円-基礎控除110万円)×税率45%-控除額175万円」という計算になり、450.5万円が税額になります。

親族から相続、贈与されたマンションを売却するときには、まずはじめに相続登記をして名義変更しましょう。また、相続税の取得費を加算できる特例を理解し、3,000万円の特別控除を利用できるかを確認することが大切です。