ペアローンで購入したマンションを売却する際の注意点

ペアローンとは「気に入ったマンションを購入したくても所得が足りず、ローンが組めない」などの時に利用されるローンをいいます。ここで注意が必要なのは、ペアローンと収入合算を一緒に考えていないか?という事です。

マンションの売却を行う場合、借入れ時に使ったのが収入合算ではなくペアローンの場合、手続きに違いが出るだけでなく、複雑な手順が必要となります。

ペアローンの特徴

住宅ローンの契約本数:2本(夫婦・親子など)

収入合算:できる
信用生命保険:名義人ごとに借入れ金額分の保険をかけることができ、名義人が死亡した際にはその名義人の持ち分に対してのみローンが免除される
住宅ローンの排除:借入額に応じて、2人とも排除を受けることができる
住宅ローン借り入れ審査:2人とも審査に通る必要がある

夫婦共に借入れ審査が必要ですが、銀行からの信用が高く借入額も大きくなります。また、控除も多いため夫婦が同様の稼ぎがある場合のメリットが大きいです。連帯保証人もローンを借りる二人がそれぞれなるため、第三者に迷惑をかけることがありません。

住宅資金を借りる際にメリットが多いローンといえますが、夫婦関係が破綻した場合には大きな問題となります。

ペアローンを利用したマンション売却の注意点

結婚に伴う新生活を行うため、夫婦が2人で購入したマンションも、居住年数を重ねる事でライフスタイルや家族の人数が変化します。別居していた両親との同居、子供が大きくなったため部屋数が欲しい、学校が遠いなど売却の理由は人それぞれです。しかし、売却代金で住宅ローンを返済してもローンが残ってしまうことが多いです。

マンションを売却してもローンが残る理由

新築マンションの購入は、実際のコストの上に利益を上乗せした金額で売却を行っています。そのため購入し居住した瞬間に、資産価値が業者利益分にあたる2割以上ダウンし、その後減価償却が行われます。

ローン借り入れには、借入れ当初の金額が大きく、返済と共に返済額が小さくなる元金均等払いと、借入期間中の返済額が一緒である元利均等払いがあります。

ペアローンで借入れを行う人は若い方が多いため元利均等払いを利用する人がほとんどです。そのため、ローン期間の半分が過ぎても借入れ金額の半額を返している訳ではないことが多いのです。

新築マンションは、若い世帯の夫婦に人気です。この若い世帯の夫婦が最も利用しやすいローンが、ペアローンなのです。給料が余り多くない若い夫婦であっても、夫婦二人の収入を合わせることでマンションの購入ができます。

またペアローンの利点には住宅ローン控除があるため、女性側の収入が男性側と同等以上の場合、特に好まれるローン形態です。

しかしこのローン形態は、夫婦それぞれがローン借り入れを最大限に利用できるようになっているため、子供が生まれるなどの環境の変化により返済が厳しくなるほど大きなローンを抱えている場合もあります。

ローンを残したままの不動産名義変更は不可能

不動産の売買の成立に必要な名義変更には、抵当権の抹消が必要となります。抵当権の抹消は、ローンの完済を行う事でできます。

しかし、短期間でのローンプランでない限り、ペアローンの借入れ残債は一般的に評価額よりも多くなってしまいます。この場合のローン完済の方法には「住宅売却価格を高くする」「預金解約」「保険解約」「身内に頼む」などの手段がとられます。

相場を超えた売却額は危険です

「売却価格を高くしないとローン返済ができない」と価格設定を高くした場合、購入者が現れない場合が多いです。価格設定には周辺の相場を考慮した適正価格が必要なのです。

不動産一括査定を利用した場合、顧客の望む高い価格での販売を請け負う不動産業者がいます。しかし相場からかけはなれた金額を提示する不動産業者は信頼できません。媒介契約を交わし、他社への依頼を不可能にしたうえで値下げ交渉を行ってくるのです。そのため、不動産業者の選択は慎重にしましょう。

ローンを残したまま行う任意売却はリスクが多い

任意売却は競売の救済措置として行われます。そのため長期間ローンを滞納3~6ヶ月が必須になり、それによりブラックリストへ掲載される事で初めて任意売却を行うことができます。このように誰でも任意売却をできる訳ではなく、信用情報への傷が条件となっています。

共有名義人二人の売却同意が必要

共有名義人の双方の資産であるため、所有者である双方の売却合意が必要です。夫婦いずれかが連絡不能などというトラブルが起こっている場合、任意売却が行えません。収入合併の場合、連帯保証人の不在のため、任意売却ができなくなります。

名義変更・抵当権解除などの手続き・手数料が2倍

マンションを売却した残りのローンを貯金で完済できるという人は、問題なくマンションの売却が行えます。しかし、一般の不動産売却と違い名義人が2名であることから、名義変更に関わる手続きの手間・費用共に2倍かかります。売却する前に、必要な費用を不動産業者に尋ねておくと良いでしょう。

ペアローン利用者が離婚により、マンション売却を行う際の注意点

夫婦が離婚しても同じ住居に変わらず居住し、離婚前と同様に住宅ローンを支払い続けることは少ないです。しかしペアローンの契約は、婚姻時と離婚後で変化することはありません。ローン契約を行っている金融機関は、夫婦の関係性にまで関与しません。

そのため離婚による財産分与で、夫婦どちらかのみが居住していてもローン支払いの義務は続きます。住宅は売却しない限り、元夫婦は婚姻時と同様にローン返済の義務はついてまわるのです。

離婚時におこる、任意売却と競売の注意点

離婚することで、住みもしない住宅ローンを払い続けるのは、納得いかないことが多いです。そのため、元夫婦の片方が返済を止めてしまうことで、もう一方に金融機関からの督促通知が届けられます。この督促状に左右されることなくローンの滞納が続くことで、返済の督促、差し押さえ、住宅の競売という流れで住宅が処分されてしまいます。

本来であれば、競売へと行きつく前に任意売却を行いたいものです。しかし、任意売却には、金融機関だけでなく債務者の1人でもある元夫婦の承諾が必要です。承諾を得られなければ、任意売却を行うことができません。

そのため離婚した元夫婦では承諾も難しく、名義人・保証人の意思を無視して行うことができる競売へと売却方法がシフトしてしまうこともあります。

競売は、スタート時点で相場4~7割の価格から売却を始め、7割程度の価格となります。任意売却は、瑕疵担保責任の放棄により価格は若干下がるものの、相場に近い価格となります。

このような売却価格に変動が起きるため、ペアローンを行う際にはトラブル回避が必要です。

離婚を行う際の財産分与をしっかりと行い、離婚をした場合の、ペアローンの支払い・住宅の名義・実際の居住者を書面で残しておきましょう。

ペアローンで購入したマンションを売却する際には、複数の不動産業者の中から最適と思われる1社を選択する必要があります。

理想的な不動産業者は、周辺情報や住宅への工夫を行う事で不動産物件の付加価値をつけてくれます。また、売買に付随する費用が安い司法書士を紹介してくれます。不動産業者の選択は、マンションの売却にとってとても重要です。

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