マンションの住み替えを行う際に多くの人が問題と感じるのが、組んでいた住宅ローンの返済が残っていることです。
住宅ローンの残債がマンションの売却価格より高く、ローン返済が完了せず抵当権抹消ができなければ、買い手が決まったマンションも売却できなくなってしまいます。そんな時に便利なのが、買い換えの際にだけ利用できる買い換えローンです。
抵当権の抹消は、不動産物件の売却条件
住宅ローンが残っているマンションを売却したくても、抵当権がついた状態では売却できません。抵当権と言うのは、金融機関からお金を借りた際に「返済が不可能なときは土地・建物で返済を行います」と言う手続きです。
抵当権はお金を借りる時に設定され、お金を返す事で抵当権は抹消されます。そのためローンの残債が残っている状態では、抵当権を抹消できないのが一般的です。
しかし、マンションを売却するだけでなく、次の物件の購入が決まっている買い換えの場合は別です。「買い換えローン」を利用することで、ローンの残債が残っていてもマンションを売却できます。
買い換えローンとは?
「新しい住宅の購入金額」+「マンションの残債」+「経費」を、一括で借りられる住宅ローンプランです。
金融機関によっては、住み換えローンとも言います。買い換えローンを利用することで、抵当権解除のローン返済資金が不足していても抵当権の解除が行えます。
例えば、結婚と同時にマンションを購入し、8年間ローンを返し続けてきた夫婦が、子供の小学校入学を機会に、部屋数が多く通学に便利な一戸建ての購入を考えました。
しかしマンションのローンの残債はとても多く、マンションを売却してもその売却金額でローンを返済しきれません。
この夫婦は、本来であればこの時点で新居購入をあきらめる必要がでてきます。
しかし、買い換えローンを利用することで、住宅の買い換えができるようになるのです。
買い換えローンの特徴
一般的なローンは、物件の担保価値の範囲内で融資が行われます。しかし、買い換えローンは、担保価値の1.5~2倍まで融資を受けることができます。
買い換えローンの注意点
今まで組んでいたローン以上のローンを組むため、返済金額が増加します。今後のライフスタイルを考慮し、ローン返済を続けることができるか冷静に判断しなければいけません。
返済期間
毎月の返済金額を下げるために、返済期間を延ばすという人が多いです。しかし、将来の生活に影響がないか冷静に考えましょう。買い換えを行う際のローン返済期間は、従来のローン返済期間を目安に長くし過ぎない事がポイントです。
買い換えローンのタイミング
マンションを売却し新居を購入する場合、マンション売却後に賃貸に引っ越してから新居を購入する売却先行や、新居を購入し引っ越した後に、マンションを売却する購入先行が一般的です。
しかし、買い換えローンを利用する場合は、マンションの売却と新居の購入を同時に行う必要性があります。売却するマンションの抵当権抹消が遅れてしまった場合、売主の債務不履行となるためです。
既存の住宅ローンの金融機関と、買い換えローンを組む金融機関を同じにすることで手続きがスムーズになります。
また、マンションの売却を依頼する不動産業者にも「買い換えローンを利用するため、決済は慎重に行いたい」と伝えておくと良いです。売却経験の乏しい不動産業者・担当者が、トラブルの原因となる場合もあるからです。
複数業者に査定を依頼すると共に「買い換えローン」の利用も相談し、金融手続きを得意とする業者を探すと良いでしょう。
買い換えローンの審査方法
買い換えローンは、一般的な住宅ローンの1.5~2倍のローンが組めるため、一般的な住宅ローンより厳しい審査が行われます。そのため借入れができない場合もあります。買い換えローンでの借入れを検討する際には、早い段階での予備審査を行いましょう。買い換えローンの利用ができると分かってから、マンションの売却活動を行う方が効率的です。
買い換えローンの優遇税制
買い換えローンは、一般的な売却ではなく、次の物件が決まっている買い換えの場合でなければ利用できません。残債が多い場合、次の購入物件は担保価値の高い物件を選ぶことが重要です。また残債が生じることで住民税・所得税から売却損を控除できる優遇税制も利用できます。こういった優遇税制も利用し、家計のやりくりを考えることも大切です。
残債分を含め、新しいローンに組み替えるということは、一見、損をした気分になるかもしれません。しかし、この買い換えローンの利用により「低金利への借り換え」や「税制の優遇措置」と言うメリットもあります。
つなぎ融資と買い換えローンの違い
家の買い換え方法の1つに「つなぎ融資」という方法もあります。つなぎ融資と買い換えローンの違いなども含めて、詳しくみていきましょう。
つなぎ融資とは
先に住み替え先の物件を購入する、いわゆる買い先行をし、売却物件が売れるまで「新居の購入資金の一部を一時的に借りる」方法を言います。つなぎ融資は、売却完了後に売却代金での一括返済が基本です。
例えば、5,000万円の新居購入を計画している場合、3,000万円を住宅ローンで銀行から借り入れ、残りの2,000万円はマンションの売却代金での支払いを計画しているとします。
そのため、居住していたマンションの売却が終わるまでは、つなぎ融資で2,000万円借り新居を購入する方法で、マンション売却後に売却代金から2,000万円を一括返済します。新居の住宅ローンと同様の金融機関に申し込むのが一般的です。
不動産業者による「つなぎ融資プラン」
売却依頼した大手の不動産業者に「つなぎ融資プラン」がある場合もあります。不動産業者からの融資の場合、もしマンションの売却が順調に進まなかったとしても、最終的に業者買取できるような物件が「つなぎ融資」の対象となります。そのため融資金額の上限は、買取り金額となります。不動産会社の「つなぎ融資」は、返済を確実に行う物件の価値を超えない金額となっています。
つなぎ融資と買い換えローンの違い
買い換えローンのように購入物件と売却物件の決済タイミングを合わせる必要はありません。しかし、つなぎ融資の借入期間中は利息が付くため、早期返済が望ましいです。
ダブルローンと買い換えローンの違い
マンションの買い換えに利用できるローンには、買い換えローンの他にダブルローンという方法もあります。ダブルローンは「既存の住宅ローン」と「新しいローン」を二重に契約する方法です。
売却予定のマンションが売却されるまで、二重のローンを支払う事になります。しかし、マンションの売却→賃貸に引っ越し→新居購入→新居へ引っ越しする際に生じる、2度の引っ越しの手間や・引っ越し費用の負担が軽減されます。
借入れ条件は、十分な年収が必要になります。買い換えローンと違い、「既存の住宅」「新居」の売買のタイミングを合わせる必要はありません。都合の良いタイミングで売買や引っ越しを進めることができます。
しかし、マンション売却完了まで時間が掛かる場合、ダブルローンの状態が続くため一時的とはいえ経済的に苦しくなります。
また、住宅ローンを二重に契約するため、「信用」「実績」「年収」がないと不可能な方法です。
マンションの買い換え時には、住宅ローンの残額よりも売却代金が少なく、ローンが残ってしまいがちです。
差額分の準備には、買い換えローンをはじめとし、幾つか方法があるので自分にあう方法を見つけましょう。