売買契約に立ち会えない場合のマンション売却の流れと委任状の書き方

不動産物件の売却を行う場合、必ず本人が手続きに立ち会えるとは限りません。しかし、不動産売買契約は売主・買主・不動産業者が立会うことが原則です。

そのため、契約に立会えない場合「代理人」を立てて「委任」を行うという方法を利用します。また、代理人には代理を証明する委任状が必要となります。

売買する当人同士が立ち会わない契約のことを「持ち回り契約」とも呼びます。
詳しくは下記のサイトで解説されているのであわせて参考にして下さい。
参照ページ:不動産売買における持ち回り契約とは

委任とは

法律行為を行う際に、当事者が必ず立ち合えるとは限りません。その場合、同席できない本人の代理人として法律行為を任せることを委任と言います。委任の内容は法律行為や事務処理などで、信頼関係が大前提となります。

不動産の売買契約においては、不動産業者が仲介契約として委任を受ける場合も定型化が進んでいます。委任とは委任者と受任者との関係で成立しており、それは従属関係ではありません。受任者は、あくまでも委任者の代理人として、自らの意見をもって法的行為や事務処理を行います。

しかし、業務の完成を目的とせず、あくまで委任者が行えない業務を代理で行うのです。

売主が売買契約に代理人を立てる理由

現代の日本では高齢者の増加と共に、空き家・空室も問題となっています。そのため不動産を売却する際に代理人を立てることは、決して珍しい事ではありません。また、代理人を立てる理由によって代理人となる人・状況・委任状が変化します。代理人を立てる主な理由は以下です。

  • 単身赴任で遠方に居住している
  • 病気、高齢などにより、法律行為などの直接契約が難しい
  • 不動産売買に関して専門知識を持たないため、専門家を代理人として任せる
  • 共有物件のため、代表者が全権を委任される

家族や知人に、マンション売却の委任を行った場合

代理人の選択には、家族や知人など信頼できる人にお願いすることが多いです。どんなに親しい家族や知人の場合であっても、委任状の作成をもって初めて権限を与えられたことになります。

委任状は、必要最小限の権限で委任することがすすめられています。状況に応じて、代理の範囲が将来的に変化する状況であっても、委任状に記載する委任内容・権限を白紙で作成するのは避けましょう。

どんなに信用できる人であったとしても、白紙委任状を渡すというのはとても危険な行為です。委任された人物の代理範囲に対する責任は、委任状を書いた人物が負う事になるという事を踏まえて委任状を作成しましょう。

委任状の内容

委任状の作成は以下を参考に委任する権限や、有効期間、日付などの必要事項の記載をしましょう。

委任する権限
  1. 売買契約の締結
  2. 手付金、売買代金の受領
  3. 所有権移転登記申請、司法書士の専任
  4. これらに関する付帯権限
必要事項
  • 代理人の住所、氏名、本人確認書類は別途添付する(運電免許証やパスポートなどの公的機関が発行した写真付き書類)
  • 不動産の表示(土地、建物に対する住所・面積・金額・建物の形状など)
  • 委任状の有効期間
  • 委任した日付
  • 委任者の住所、氏名、捺印(実印)、連絡の取れる電話番号を直筆で記入
  • 委任内容・権限(閲覧・証明の種類、請求年月日、枚数)

委任状作成の注意点

委任状の書き方には、定義は存在しませんが明確な目的と依頼相手、日付が必要です。委任状は、必ず委任者の方が自筆により住所、氏名、押印を行う必要があります。委任の権限を実行する際には、委任状の原本の提示が必要です。

また、委任状の内容を確認するため、委任者に電話連絡で確認を取る場合があります。委任状には、本人と代理人を証明するための印鑑証明書・確認書類が必要となります。

マンション売却の流れ

  1. 相場などの情報収集
  2. 不動産業者への査定依頼
  3. 不動産業者との媒介契約
  4. 不動産売却の開始・交渉
  5. 売買契約の締結
  6. 物件の引き渡し

「2」の不動産業者への査定依頼で、売買の全てを委任する場合、依頼前に委任状を作成します。

「5」の売買契約の締結で、売買契約のみ委任を行う場合、契約前に委任状を作成します。

「6」の物件の引き渡しで、名義変更と代金の受領を代理で行う場合、引き渡し前に委任状を作成します。

親名義のマンションを売却する場合

親名義の不動産物件を子供が売却する機会というのは多くはないものの、親が病気・亡くなっているなどの場合により、親自身が売却できないという状況はありえます。また、不動産物件の所有者である親が認知症や重度の障がいで、自分の判断で売却できなくなっているという状況も起こりえます。

親が死亡している場合

亡くなった親の名義で、マンションを売却する事はできません。相続人が複数いる場合は、相続人同士が協力し全員の意見を合わせる事で売却が行えます。一人でも反対するとマンションの売却ができなくなります。

遺産分割の話し合いで誰か一人を代表者とし、マンションの名義を変更後にマンションを売却し、売却金額を相続人全員で分ける必要があります。

親が売却の判断をできない場合

親は生きているが、意識不明の重体や認知症などによって売却の意思を示せない状態で、介護費や療養費が必要な場合、マンションの売却を行いたいと考えるものです。

このような場合であっても、子供が親の代理としてマンションを売却する時には委任状が必要です。しかし、実際には委任をしようにも意思を示す事ができないため委任状が無効として扱われてしまいます。

自らの意思を示す事ができない場合、保護的な役割を持つ成年後見人を付ける事ができます。この成年後見人となる事で親のマンションを売却できます。

成年後見人は、家庭裁判所による選任が必要です。しかし、成年後見人であっても勝手に自由に財産を処分できません。親に必要な費用、つまり介護費・療養費などでなければ売却は行えません。財産を使う場合には、財産の所有者本人のためということが条件です。

成年後見人は、家庭裁判所によって選任されるため、親族の希望通りの人物がなるとは限りません。弁護士などの親族以外から選任されることもあります。家庭裁判所に専任してもらう場合、候補者を提出する際に親族などの協議で候補者を決定しますが、家庭裁判所が希望の候補者を成年後見人とするとは限りません。

媒介契約を行う不動産業者に委任をする場合

不動産売買の「契約」「名義変更」の際に、売買の当事者が同席できない場合、信頼できる近親者に代理を頼むこともありますが、媒介契約を交わした業者に委任を行う事もできます。また、不動産業者との媒介契約時に、不動産物件の所有者に代理人を立て媒介契約を行う事もあります。

委任状の作成

不動産業者が、マンションを売却する際に売主の代理人を行う場合、委任状が必要となります。委任状には、媒介契約に定められた関係事項に違反することなくそれを定めなければいけません。

また、委任事項を受任者である不動産業者が受任した旨の書面を、委任者に交付することが必要です。この場合、委任状は媒介契約書と同時期に作成します。

委任状に必要な記入事項

  1. 売買物件の表示
  2. 売却条件
  3. 甲の禁止事項
  4. 有効期限
  5. 解除に関する事項
  6. 指定流通機構への登録など
  7. 業務報告
  8. 報酬
  9. その他の代理権限

「2」の売却条件は、価格、手付金、手付解除機嫌、融資未承認の解除期限、違約金の金額、公租公課の分担金算出、金銭の取扱い、決済・引渡日、所有権移転登記申請手続きなどがあります。

これらを記入した後に、甲である委任者の住所・氏名・押印と、乙である受任者の住所・氏名・押印を行います。

委任者・受任者の合意署名の後に、委任状をベースとして「代理契約書」を作成します。

注意点

媒介契約も代理契約も口頭による双方の合意のみで成立するため、本来は契約書面の作成は必要としません。しかし、書面によって契約の内容を明確にすることでトラブルを回避しているのです。書面の作成は自己防衛のためにも必要です。

特に不動産業者に代理を委任するのであれば、売主の権限を不動産業者に渡す事になります。近親者における委任よりも、一層の注意をもって書面作成を行う必要があります。

まとめ

委任状の内容には、物件・権限などすべてを明確にする必要があります。曖昧にする事で、権限の範囲を超えた行動を代理人が行いトラブルが起きた場合、代理人を選定した者に責任が問われることになるからです。

まずは「売買契約に関する権限」「売却に関する権限」「登記に関する権限」「代金受領に関する権限」これらを明確にする必要があります。

親しい間柄で相手を疑う事はしたくないものです。しかし、リスクを回避する事は相手を疑う事ではなく、トラブルを回避するために必要だと理解し、明確に内容が記載された委任状を作成する事が大切です。

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