不動産売買は、とても大きな金額の取引です。一度契約を締結した後、安易に契約をなかったことにはできません。しかし、昨今ではさまざまな条件付けを行い、契約解除ができるように配慮されています。この契約解除の条件は当然の権利ではなく、原則的には解除できないものを解除できるように、双方の合意のもと記載されているのです。
不動産売買契約は原則的には契約解除できない
不動産売買の契約を締結した場合、原則として契約の取り消しや解除はできません。なぜなら、当事者の一方的な理由で契約を取り消しては、契約の解除を行われた者が予想外の損害を受けてしまい、契約としての意味を失ってしまうからです。
例外として売買契約を行う際、契約相手に騙された、脅されたなどの理由があれば契約を取り消すこともできます。また、売主が売買契約書や重要事項の内容に定めた約束を守らない、つまり債務不履行などの事情がある場合も、契約の解除が行えます。
しかし、これは本来あってはいけない事情であるため例外として考えられています。
契約形態による売買契約の「取り消し」「解除」条件
売買契約には、どうしても解除するしかない状況というものがあります。購入予定の物件が目的どおり利用できない場合などです。その場合、売買契約書の違反による解除などは重い違約金が生じます。
反面、契約は交わすものの「ローン特約」のように購入条件が満たされない場合解約できるなどの特約を定める事もできます。売買契約の際に、その契約を満たし成約完了に不安が残る場合、売主・買主合意の元で特約を定めておきましょう。
手付金の放棄解除と、解除期限
売主が手付解除する場合は、買主側に対し受領した手付金の倍額を支払う必要があります。買主が手付解除する場合は、手付金を放棄することで手付解除ができます。
売買契約締結時、買主から売主に支払われる手付金には解約手付の性質があり、手付金額を相手に支払うことで、自己都合により契約を解除できるようになります。しかし、いつでも手付解除が行えるわけではありません。
解除時期には民法557条に手付解除の規定が定められ「当事者の一方が、履行に着手するまで」であれば解除が行えます。
買主が売買代金の一部を支払い、履行の着手があった場合、売主側からの手付解除はできなくなります。そのため不動産売買契約をする場合、手付解除の期限を設定できます。当事者の一方による履行の着手があった場合でも、手付解除の期限が来るまでの間であれば手付解除を行うことができます。この期限を過ぎた場合、当事者の一方に履行の着手が行われていなくても、手付解除をすることはできません。
契約違反による解除
契約違反による解除は、手付解除とは違い売主・買主のいずれかが契約内容に違反した場合に、契約解除を定めたものです。契約違反があれば、違反された者が違反した者に対して一定期間の間、契約履行の催促を行っても応じない場合は契約を解除できます。
契約違反により契約解除となった場合には、売買代金の10%か20%の違約金の支払いが定められています。こうすることにより相手に対して違反への抑止力を高めるのです。また、この定めによって自分に対する違反リスクも当然高くなります。
不動産業者が売主の場合、違約金は売買代金の20%が上限となります。実際を被った損害が、違約金よりも大きくても小さくても、規定の違約金の支払い義務が定められます。差額の請求はできません。
違約金と手付解除金の違いを理解していない不動産業者もいるため、売買契約を交わす際に曖昧である場合があります。その場合には、買主が一方的に不利益を受け、トラブルが回避できるように明確に表現する必要があるため、理解ができない場合は指摘を行い説明を受け、必要であれば修正を求めるように注意しましょう。
危険負担による解除
売買契約締結後、引渡し前の土地・建物が、地震や火災など不可抗力な理由で消滅した場合であっても、買主は代金を支払う義務があります。この義務を、危険負担と言います。
しかし、不動産売買において、契約締結から引渡しまでに時間がかかることは多いです。そのため契約した不動産物件が、引渡し前に消滅する危険に備え、売主がその危険性を負う「特約」をつける必要があります。この特約は、所有権が買主に移転と同時に、代金を支払う義務、つまり危険負担も移転するというものです。「引渡し前に天災などの不可抗力により損害を被った場合、契約を解除できる」と記載します。
この損害に対して、契約解除の他に売主の負担で補修して引渡す選択もできます。万が一の場合に備え、危険負担に関する特約がないか、確認しましょう。
瑕疵担保責任に基づく解除
不動産物件の引き渡し後に、買主が実際に居住に利用して初めて、雨漏りやシロアリの被害に気づくことがあります。土地、一戸建て、マンションなどの不動産物件において利用に問題がある欠陥を「瑕疵」といいます。不動産売買成約後に、買主がその事実を知る事が無かった隠れた瑕疵が発見された場合、買主は売主に対して利用目的を達成するための修補や損害賠償を求めることができます。
売却を行った住宅が欠陥住宅であったことを、売主が知っていたかどうかに関係なく、損害の賠償を請求されるため注意が必要となります。特に瑕疵が重大で、居住に利用できない場合、契約解除を請求できることがあります。不動産物件の瑕疵に対する売主の責任を「瑕疵担保責任」といいます。
瑕疵の主な種類
瑕疵の主な種類には下記のものがあります。
物理的瑕疵(建物)
シロアリ、雨漏り、水漏れ、耐震強度の不足など。
物理的瑕疵(土地)
土壌汚染、地中障害物の存在など。
法律的瑕疵
契約を行った土地に法令上の建築制限が課せられている。法令などによって取引物件の自由な使用が阻害されている。
心理的瑕疵
契約を行った建物の過去に自殺や殺人事件などがある。周辺に暴力団・宗教家などがいる事で、住み心地に影響を与える
環境的瑕疵
周辺環境に、騒音・振動・異臭・日照障害など取り巻く環境に問題がある。
売買契約において、売主が瑕疵担保責任を負うかどうかは、売主と買主の間で自由に決定します。責任を負う場合、不動産の引渡しからどれほどの期間が有効かも売主と買主によって決定します。隠れた瑕疵を原因とするトラブルを防ぐため、売主が把握している瑕疵の情報提供は誠実に行いましょう。
特約による解除
売買契約を締結する際に、買主がローンを利用するからといってローンがおりるとは限りません。売買物件の引き渡しまでに融資の承認がおりないことがあります。その危険に対して備えるのが、ローン特約です。
買主の責任でない理由で、融資が行われない場合には買主から無条件で契約解除できるという性質を持ちます。ローン特約により契約が解除される場合、売主は領収済みの金銭を全て返金します。
不動産業者も仲介手数料を得ている場合は売主・買主の双方に返金しなければいけません。ローンを行う場合には、売買契約書のローン特約の有無を必ず確認しましょう。
合意による解除
契約の定めに関係なく、売主・買主の双方による話し合いのもと合意を成立させ、契約を解除する方法です。この合意解除は「売主・買主の間に合意が成立」「解除合意の条件」を定め、その内容を書面に残すことが必要です。
売買契約は、売主と買主の「合意」「条件」のもとに作成されます。契約書に契約解除の条件を記載し明確にすることで、初めて契約解除ができます。そのため、契約を行う際には十分に売買契約書と重要事項説明書の確認が必要です。