マンションは高額な商品なので、数パーセントの価格差でも大きな金額になります。そのため、消費税増税を気にする人が多いのも事実です。結論から言うと、マンションは消費税増税前に売却した方がお得ではあります。今回はその理由を解説します。
消費税がかかる取引とかからない取引
マンションを売却するときには、そもそも消費税がかかる取引とかからない取引があります。個人が売主である場合には、不動産の売買取引は消費税がかかりません。つまり、ほとんどの中古マンションの売買取引には消費税がかからないということです。
個人間の取引
個人間の取引とは、宅建業者が不動産を売却する以外の全ての取引を指します。一般の人が自分の自宅を売却するときも、個人間取引となり消費税はかかりません。また、買主が法人であっても売主が個人の場合、消費税はかかりません。
法人が売主の取引
法人が売主の取引とは、たとえば「新築住宅の販売」、「リノベーションマンションの販売」のような取引です。
最もメジャーな取引は、新築住宅の販売でしょう。新築マンションでも新築一戸建てでも同じで、どちらも消費税がかかってきます。ちなみに、チラシやネットなどの広告に表示されている金額は、税込みの金額になります。
また、中古物件でいうとリノベーションマンションの販売なども、法人が売主である場合が多いです。ただ、自分でリノベーションした物件を、個人が売主で売却する場合は、あくまで個人間取引となるので非課税です。
不動産の種類で消費税は異なる
売主が個人や法人か以外にも、不動産の種類によって消費税は異なります。また、マンションをはじめとして、住宅は建物と土地という2つの不動産種類があるので、価格の内訳が難しいです。
土地は非課税
不動産の土地部分は非課税で、建物部分は課税対象になります。そのため、新築マンションの分譲価格は、実は建物部分にしか消費税がかかっていません。
土地が非課税である理由は、「消費するもの」ではないからです。そもそも消費税は、消費するモノやサービスに対して課せられる税金です。しかし、土地は放っておけば草が生えるなど、荒れてはいきますが劣化するわけではありません。つまり、時が経つにつれて消費されるものではないということです。
土地の価格は、周辺環境の変化や時代の流れによって変わります。しかし、築年数が経過したという理由で土地の金額が下がることはほぼありません。なぜなら、土地は消費されないからです。
一方、建物は築年数が経過するごとに、コンクリートが劣化したり、クロスが劣化したり消費されていきます。つまり、建物はどんどん消費されているので、消費税がかかってくるということです。
マンションの土地割合
あまり重視されてはいませんが、マンションにも土地部分があります。マンションの土地部分は、部屋の広さによる持ち分割合で案分されています。つまり、1,000平方メートルの土地に30戸のマンションを建築したときは、その30戸の入居者で1,000平方メートルの土地を持ち合います。
仮に、この30戸が全て同じ広さの部屋であれば均等に案分されるので、1,000平方メートル÷30戸=1人約33.3平方メートルの土地を所有している扱いです。部屋の広さが違えば、広い部屋を所有しているほど、土地も広い土地を所有しているという扱いになります。
マンション売却で消費税がかかる項目
冒頭でいったように、マンション売却は消費税増税前に行った方がお得と言えます。その理由は、以下のマンション売却に伴いかかる諸費用である「仲介手数料」、「司法書士報酬料」に消費税がかかってくるからです。
つまり、増税前の方が諸費用にかかる消費税率が低いので、売主の負担額が減りお得ということになります。
仲介手数料
仲介手数料は、以下のように売却価格によって手数料率が異なります。
- 物件価格(税抜き)が200万円以下:物件価格×5%
- 物件価格(税抜き)が200万円超~400万円以下:物件価格×4%+2万円
- 物件価格(税抜き)が400万円超:物件価格×3%+6万円
ここで注意したいのは、上記で算出した金額に消費税がかかるという点です。たとえば、マンションを売却して2,750万円で売却できたとします。
その場合、仲介手数料は「(2,750万円×3%+6万円)×消費税1.08」という計算になり、約955,800円になります。消費税が10%に上がった場合は、これが973,500円に上がります。
上記の仲介手数料は、あくまで不動産会社から請求される仲介手数料の上限です。ただし、多くの不動産会社が上限いっぱいで請求してくる点は認識しておきましょう。
司法書士報酬料
マンションを売却したときは、「抵当権抹消登記」、「所有権移転登記」の2種類の登記があります。
住宅ローンが残っている場合は、金融機関が設定している抵当権を抹消する必要があります。また、売主から買主に所有権を移転する登記も行います。
所有権移転登記の費用は買主が支払いますが、抵当権抹消登記の費用は売主の負担です。登記は基本的に司法書士に依頼するので、その報酬として5万円前後の費用がかかります。この報酬料にも消費税がかかるので、増税するということは報酬料も上がるということです。
マンション売却は消費税増税前の方が良い
くり返しますが、マンションの売却は消費税増税前の方が良いでしょう。一番の理由に、前項で解説した諸費用の件がありますが、もう一つの理由としては不動産の全体価格が上がるので、消費者マインドが下がるリスクがあるからです。
消費者マインドとは?
消費者マインドとは、簡単にいうとマンションの「購買意欲」のことで、要は、世間が今マンションを買いたいと思っているかどうかという指標になります。マンション売買における消費者マインドは、マンションの初月契約率が指標となります。
マンションの初月契約率とは、新築マンションが最初に売り出した月で、どの程度売れたかを数値化したものです。国土交通省のホームページにデータが載っていますが、リーマンショック前後を除くと、ここ10年ほどでは好不調の境目である70%を切った年はありません。
しかし、2016年には7年ぶりに68.8%と、70%を切る結果になりました。つまり、消費者マインドは少しずつ下がっているということです。
※参照URL:平成28年度 住宅経済関連データ3-(8)
http://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2_tk_000002.html
新築物件の価格は上がる
先ほどいったように、新築物件は売主が不動産会社なので、建物部分に消費税がかかってきます。仮に、4,000万円のマンションで建物部分が3,200万円の場合には、消費税が8%から10%になったときは価格が64万円も違ってきます。
このように、消費税が上がることで新築物件価格が上がり、その影響で消費者マインドが低下する場合があります。そうなると、中古マンションも影響を受けるので、その前にマンションは売却した方が無難と言えるでしょう。これが増税前に売却した方が良いもう一つの理由です。
中古マンションの売買は、基本的に個人間取引になるので消費税がかかりません。しかし、マンション売却時にかかってくる諸費用には消費税がかかり、増税することで新築物件価格が上がり消費者マインドが低下する恐れがあります。これらの理由で、マンションは増税前に売却した方が良いでしょう。