空き家対策特別措置法の内容と東京や埼玉などの空き家バンク

現在日本では、空き家の増加が社会問題になっています。事実、少子化や都心への移住の増加により空き家が増えている状況です。人が集まる都心でさえも相続物件などをはじめ、空き家が増えてきています。今回は、そんな空き家問題と関連する法律や自治体の取り組みを解説していきます。

空き家対策特別措置法とは

日本の空き家問題は冒頭のような状況になっています。そのため、2015年2月に空き家対策特別措置法が施行され、空き家問題に対する対策が取られました。まずは、その空き家対策特別措置法を理解しておきましょう。

空き家はなぜ問題となっているか?

空き家対策特別措置法の説明をする前に、そもそもなぜ空き家が問題になっているかを解説します。5年ごとに集計している総務省統計局の2013年時点でのデータによりますと、空き家は5年前と比べて63万戸増加し820万戸あります。

2013年時点での総住宅数は6,063万戸なので、13.5%が空き家という計算です。別荘などの二次的住宅数は41万戸なので、二次的住宅数を除いても12.8%という数字になります。つまり、日本にある住宅のうち約7.8戸に1戸が空き家ということです。

ここまで空き家が増えてくると、以下のような点が懸念されます。

  • 建物倒壊による被害
  • 老朽化した家の存在で景観が損なわれるリスク
  • 空き巣などの犯罪被害の増加
  • 不法滞在などの犯罪リスクの上昇

このような背景から、空き家を減少しようと施行されたのが空き家対策特別措置法です。まずは、空き家対策特別措置法が施行された理由を抑えておきましょう。

空き家対策特別措置法の内容

空き家対策特別措置法の内容は、簡単にいうと「空き家の解体の通告や強制対処ができる」、「空き家を固定資産材の特例対象から除外」の2点です。細かい内容はほかにもありますが、この2点が空き家対策特別措置法の主な内容です。

空き家の解体の通告や強制対処ができる

よくニュースでゴミ屋敷が話題になっていますが、たとえ空き家がゴミ屋敷と化して周辺住民の要望があったとしても、従来は取り壊すなどはできませんでした。 ですが、空き家対策特別措置法の施行により、以下のようにルールが変わりました。

  • 空き家の解体や修繕などの通告、助言する
  • 改善がなければ猶予期限を受けて改善勧告
  • 改善がなければ強制対処ができる

つまり、空き家が周辺に被害をもたらすと考えられれば、自治体が所有者に改善する旨を通告できます。それでも改善されなければ、行政主導で解体作業などの強制対処ができるようになったということです。

実際に2015年10月に、神奈川県横須賀市で全国初となる空き家の強制撤去が行われています。

空き家を固定資産材の特例対象から除外

土地や一戸建てなど、不動産には固定資産税、都市計画税が課せられていますが、従来は、住宅用の土地に限り、以下のような特例がありました。

  • 200平方メートルまでの部分:固定資産税1/6に軽減、都市計画税1/3に軽減
  • 200平方メートルを超える部分:固定資産税1/3に軽減、都市計画税2/3に軽減

「住宅」という生活に必須な不動産に対しては、上記のような税金の軽減措置があります。

ですが、空き家対策特別措置法により、空き家にはこの固定資産税、都市計画税の軽減措置がなくなります。つまり、空き家として放置するなら税金を多く徴収すると通告し、少しでも空き家の状態を改善するように促したということです。

上述したように、空き家対策特別措置法は少しでも空き家の数を減らす、もしくはリスクのある空き家を減らすために施行されました。

問題点

空き家対策特別措置法で問題点とされているのは、以下の点になります。

  • 相続が生じているとき
  • 物件を共有しているとき
  • 空き家減少の根本的対策ではない

相続が生じているときは、相続登記が終わるまで名義人が誰かは不明です。また、物件を共有名義にしているときは、名義人同士で「空き家をどうするか?」の考えが違う場合があるので、行政との協議が難航するケースがあります。

さらに、空き家対策特別措置法ができたからといって、関係者との調整や解体の手配など、簡単に空き家を除去できるものではありません。そのため、そもそも空き家対策特別措置法は空き家の活用や空家になる件数自体を抑える根本的な対策ではなく、緊急避難的な手段になります。

参考URL:国土交通省(空き家等対策の特別措置法関連情報)

東京や埼玉の空き家バンクとは?

では次に、空き家を減らすための取り組みとして、「空き家活用」の視点から展開されている空き家バンクについて解説します。今回は、空き家バンクの中でも東京や埼玉でも利用できる空き家バンクに特化して解説していきます。

空き家バンクとは?

空き家バンクとは、空き家を所有している人と、空き家を利用したい人をマッチングするサービスになります。空き家バンクは自治体が主導で運営しており、イメージとしては自治体が不動産仲介会社の役割をするようなものです。

ただ、不動産仲介会社には仲介した報酬である仲介手数料を得るという目的がありますが、空き家バンクは自治体が運営しているため営利目的ではありません。その点が空き家バンクの最大の特徴と言えるでしょう。

空き家バンクの仕組み

空き家バンクが関係してくるのは、空き家の所有者、空き家の利用希望者、そして自治体の3者です。不動産会社が関わってくるケースもありますが、あくまでサブ的な要素での関わりになります。

また、空き家バンクと不動産仲介会社の違いとして、空き家バンクはあくまで「マッチング」することが目的という点が挙げられます。

つまり、空き家の所有者と利用希望者をつなげるだけであり、その交渉や契約などには関与しないということです。不動産仲介会社であれば、交渉や契約も行うので、その点は大きな違いと言えるでしょう。

実際の取引

不動産は民法や宅建業法などの法律も絡んでくるので、実際に契約行為をするときは専門家が必要です。また、知人同士の取引ならまだしも、知らない者同士が個人間で不動産取引するのは、所有者の立場からも利用者の立場からも不安になるでしょう。

そのため、先ほどいったように不動産会社を絡ませる自治体が多くなります。つまり、マッチングは自治体主導の空き家バンクで行い、最終的な交渉や契約行為などは不動産会社が行うということです。

本来であれば、400万円以上の不動産仲介は、「売却価格×3%+6万円」の仲介手数料がかかります。しかし、仲介は空き家バンクが行うので不動産会社が介在したとしても、もっと安価で取引できるため、その点も空き家バンクのメリットと言えるでしょう。

東京、埼玉の空き家バンク

東京も埼玉も空き家バンクを行っている自治体はありますが、まだ数は少なく、また郊外や島なども多いエリアになります。具体的には以下のような場所です。

上記は一部なので、気になる方は「東京都 空き家バンク」や「埼玉県 空き家バンク」で検索してみてください。

登録方法と必要書類

空き家バンクは空き家の所有者が自ら登録する必要があります。登録希望者はまずは自治体に問い合わせてみましょう。登録方法としては、登録申請書を提出するだけですが、以下の書類が必要になります。

  • 空き家の情報
  • 同意書(個人情報の取り扱いなど)
  • 空き家の図面や写真などの資料
  • 不動産会社と契約していれば媒介契約書

上記書類を提出して、空き家バンクに登録できるかを自治体の方で審査します。たとえば、あまりに損傷が激しい空き家などは、利用者が現われないと判断され登録は難しいでしょう。

このように、空き家対策特別措置法の施行により、空き家を減らす、もしくは活用する努力をしています。空き家バンクはまだまだ全国的に普及しているとは言い難いですが、空き家の所有者からするとメリットは大きいと言えるでしょう。空き家活用を検討している人は、ぜひ活用してみてください。