最近では、中古住宅の売買時に「ホームインスペクション」を実施することも多くなっています。ただ、ホームインスペクションは住宅売買時に重要なことの割には、まだまだ認知されておらず、普及率は未だに低いと言えるでしょう。
今回は、中古住宅売買時に知っておくべきホームインスペクションについて、概要や費用相場、実施タイミングなどの詳細を解説していきます。
ホームインスペクション(住宅診断)とは
ホームインスペクションとは、住宅診断のことです。つまり、中古住宅を売買するときに、その家に欠陥がないかを診断します。主な目的は、物件引渡後のトラブル回避と、事前に建物を診断することで、買主・売主ともに安心して取引をすることです。
宅建業法の改正
ホームインスペクションが今注目されている理由の一つに、宅建業法が改正されたという点があります。2016年5月に宅建業法改正案が国会で成立したことよって、早ければ2018年までにホームインスペクションの説明は義務化されます。
注意したいのは、ホームインスペクションの「実施」が義務化されるわけではなく、「説明」が義務化されるという点です。具体的には、中古住宅売買時に不動産会社が売主・買主と媒介契約を結ぶときに、以下の点を説明およびヒアリングします。
- ホームインスペクションを受けた履歴があるか?
- ホームインスペクションを実施する意向はあるか?
- 実施するなら業者を紹介するか?
この「ホームインスペクションの説明」の目的は、ホームインスペクションの認知です。
まだまだホームインスペクションを知らない人もいる中で、上記の説明およびヒアリングを実施することで、ホームインスペクションを知ることができます。知った上で、実施の有無を判断するということです。
ホームインスペクションの内容
ホームインスペクションは、基本的に住宅の調べられる範囲の全てを調べます。一般の人が見られるところだけ診断しても意味がないので、プロならではの目線で普通は目視しない範囲も調べるのがホームインスペクションのメリットです。
調査範囲は、主に以下の5か所です。
- 外回り
- 室内の状態
- 床下の状態
- 天井裏の状態
- 設備の状態
ただし、マンションの場合は共用部扱いとなっている部分もあるため、調査する範囲が制限されることがあります。一戸建ては全て自分の所有物なので、調査範囲に制限はありません。
外回り
外回りの調査とは、以下のような調査のことです。
- コンクリート部分のひび割れや水染み
- 塗装の剥がれや劣化
- タイルの浮きや剥がれ
- 屋根部分の変色や腐食
- 雨どいやバルコニー手すりなど
このように、外観に関する部分の調査になるので、マンションの場合はマンションの建物全体というよりは、室内に近い部分の調査になります。一戸建ての場合は、一戸建て全体の調査です。
室内の状態
室内の調査とは、以下のような調査です。
- クロスに剥がれた劣化がないか
- フローリングの劣化やひび割れはないか
- 畳に腐食やカビはないか
- サッシやドアなどに機能不全はないか
目に見える部分もありますが、機能不全や細かな劣化なども確認してくれます。
床下の状態
床下の状態とは、以下のような調査をします。
- 主に土台部分に腐食や割れ、激しい劣化がないか
- 床下のコンクリート部分の欠損がないか
マンションでは床下を見るのは困難なため、これは主に一戸建て調査時の内容になります。
天井裏の状態
天井裏の状態とは、以下のような調査です。
- 梁や木材部分の虫食いや水染み、破損はないか
- 天井裏部材の接合部分に緩み傷みの確認
前項と同じく、マンションでは天井裏を見るのは困難なため、これは主に一戸建て調査時の内容にあたります。
設備の状態
設備の調査とは、以下のような調査のことです。
- 給水設備の変色や漏水
- 給湯設備の劣化や動作不良
- 排水設備の詰まりや漏水
- 換気設備の操作不良や接続不良
主に、正常に利用できるかどうかのチェックをします。
調査時間と費用相場
調査時間は住宅の規模や調査範囲によって異なりますが、建物面積100平方メートル、つまり30坪ほどで2~3時間程度の時間がかかります。マンションの場合は調査範囲が狭くなるので、もう少し短くなるでしょう。
費用については、調査範囲や調査を依頼する機関・業者によります。参考までに、日本住宅工事管理協会が出典している費用相場を紹介します。
- 新築戸建てのホームインスペクション:4万円
- 上記に屋根裏オプション:1万円
- 上記に床下オプション:1.5万円
- 上記に耐震オプション:3万円
- 中古戸建のホームインスペクション:6万円
- 中古マンションのホームインスペクション:5万円
このように、建物種類や調査範囲によって費用は変わりますが、5万円前後から依頼ができます。
※参照URL:一般社団法人 日本住宅工事管理協会
http://nichijuko.info/hihiyo/
診断するタイミングはいつがいいのか?
買主にとって、ホームインスペクションを依頼するベストなタイミングは、物件に申込を入れた後から契約までの期間になります。なぜなら、売買契約を結ぶまでは、キャンセルしてもペナルティは生じないからです。
つまり、万が一、ホームインスペクションの結果で検討取りやめした場合でも、ペナルティなしでキャンセルできるということです。
一方、売主が自分の物件価値向上のために、自らホームインスペクションする場合もあります。その場合は、売却活動の前にしておくと良いでしょう。なぜなら、ホームインスペクションした旨が広告でもアピールできるので集客増につながるからです。
日本ホームインスペクターズ協会について
つづいて、日本ホームインスペクターズ協会について解説します。ほかにも色々と組織や会社はありますが、日本ホームインスペクターズ協会が業界の第一人者と言えるでしょう。
日本ホームインスペクターズ協会とは?
日本ホームインスペクターズ協会(JSHI)は、日本でホームインスペクションを推進するために2008年に設立された協会です。上述したように、日本でもホームインスペクションは少しずつ浸透していますが、まだまだ認知度や利用率は低いです。
その中で、JSHIは実際に建物診断をする「ホームインスペクター」の育成をメインに活動しています。ちなみに、アメリカでは中古住宅取引の中で70%~90%程度はホームインスペクションを実施しているので、中古住宅売買時にはホームインスペクションは常識となっています。
公認インスペクターとは?
JSHIに公認されたインスペクターのことを、「公認インスペクター」と呼びます。公認インスペクターは、中立な立場でアドバイスをするホームインスペクションの専門家です。この資格は民間資格であり、以下のような内容の試験に合格する必要があります。
- 住宅建築に関する法規など
- 住宅の構造に関すること
- 住宅の施工や設備に関すること
- マンション管理に関すること
- コンプライアンスやモラルに関すること
JSHIのホームページからホームインスペクターを検索することがで、窓口の会社や取得している資格、氏名や顔写真まで確認することができます。消費者にとっては、JSHIが認定しているホームインスペクターですし、顔や経歴が見られるので安心して依頼できるというメリットがあります。
ホームインスペクションを検討している人は、まずは日本インスペクターズ協会のホームページを見てみると良いでしょう。
※参照URL:日本インスペクターズ協会
https://www.jshi.org/
このように、ホームインスペクションは宅建業法改正もあり、少しずつ世の中に浸透してきています。今後は、さらにメジャーになっていくと思われるので、マンションを売買するときには知っておきましょう。少しでも不安があるなら、5万程度から依頼できるので、売却前のホームインスペクションをおすすめします。