築40年・50年・60年のマンションは、いわゆる「築古マンション」と言われます。このようなマンションは、築浅マンションと比べて建物が劣化しているので、リノベーションしてから売却する人もいます。
しかし、リノベーションにもお金がかかるので、一概にリノベーションした方がお得とは言えません。そこで今回は、築古マンションはリノベーションしてから売った方が良いのか詳しく解説します。
築古のマンション価値
築40年以上経っている築古マンションをリノベーションした方が良いかは、物件の状態や競合環境によります。
マンションによって劣化具合は様々で、特にマンション共用部は自分で補修したり清掃したりできません。そのため、そのマンションの修繕計画や管理状況によって劣化具合が異なり、その劣化具合によってリノベーションするべきかどうか変わります。
リノベーション費用について
マンションでいう「リノベーション」とは、共用部のことではなく室内のことです。共用部は入居者全員で持ち合っている部分なので、個々で形状を変更したり仕様を替えたりすることはできません。
室内をリノベーションするかどうかの判断基準は、「リノベーション費用よりも価格を上乗せできるか」という点です。そのため、以下の箇所のリノベーション費用を把握しておきましょう。
- クロスの張り替え費用
- フローリングの張り替え費用
- キッチンのリノベーション費用
- トイレのリノベーション費用
- 浴室のリノベーション費用
ただ、リノベーションは仕様や設備の種類、そしてリノベーションする業者によって金額は大きく異なります。そのため、以下で紹介する金額はあくまで目安金額として認識してください。
クロス・フローリングの張り替え費用
クロスの張り替え費用は、目安として6畳の部屋の全面張り替えで4万円ほどで、また、フローリングの張り替え費用は、6畳の部屋で10万円ほどです。
基本的にはクロスとフローリングの範囲によって金額は異なりますが、内訳として最も金額が高いのは「職人」の人件費です。そのため、小規模の張り替えよりは一気に大きな範囲を張り替えた方が良いでしょう。
キッチン、トイレ、浴室のリノベーション費用
キッチン、トイレ浴室のリノベーション費用は以下の通りです。
- キッチン設備の入れ替え:50万円~100万円以上
- トイレ設備の入れ替え:10万円~20万円以上
- ユニットバスの入れ替え:50万円~70万円ほど
- 洗面化粧台の入れ替え:7万円~20万円ほど
ただ、たとえばキッチンであれば「コンロ入れ替え」、「建具入れ替え」のみであれば数万円~十数万円です。箇所や範囲によって金額が大きく違うので、複数のリノベーション業者を見比べましょう。
リノベーションするべきかどうか
だいたいのリノベーション費用が分かったところで、次はその金額を売却価格に上乗せできるかという話です。もちろん売却金額は競合環境や市況によって異なるので、リノベーションした方が良いかどうかも、そのときの状況によります。
ただ以下の点を抑えておくと、築古マンションはリノベーションした方が売れるかどうかの判断がしやすいです。
- 築年数ごとのマンション価格推移
- リノベーションするべき状況
- リノベーションしない方が良い状況
築年数ごとのマンション価格推移
まずは、マンションは築年数が経つごとにどの程度価格が推移するかを理解しましょう。東日本不動産流通機構のデータによれば、マンション価格の推移は以下の通りです。
- 築0~5年:平方メートル単価36.3万円
- 築6~10年:平方メートル単価34.6万円(下落率4.7%)
- 築11~15年:平方メートル単価30.7万円(下落率11.3%)
- 築16~20年:平方メートル単価26.0万円(下落率15.4%)
- 築21~25年:平方メートル単価23.0万円(下落率11.6%)
- 築26~30年:平方メートル単価22.8万円(下落率0.9%)
- 築31年~:平方メートル単価21.9万円(下落率4%)
残念ながら築31年以降の細かいデータはありません。しかし、このデータから言えるのは、築25年を経過すると下落率が小幅になってくるということです。これは、築年数にこだわりが強い人は築25年程度で一旦区切るため、築25年を過ぎると下落が小幅になっていると考えられます。
つまり、築40年、50年、60年と築年数がさらに経過しても、売却価格は大きく下落しない可能性が高いです。仮に築年数が経つほど下落率が大きくなるのであれば、リノベーションしても、下落した金額を補えるほど売却価格が上がるとは考えにくいです。
そのため、築古マンションはリノベーションした方が良い場合が多いと言えるでしょう。とはいえ、築古マンションをリノベーションするべきかどうかは、「その部屋の状態」、「共用部とのギャップ」、「立地的価値」の3点を確認してから判断しましょう。
※参照URL: 東日本不動産流通機構
リノベーションするべき状況
築古マンションをリノベーションするべき状況は、「競合物件に築浅物件が多い」、「共用部が劣化しているとき」のような状況のときです。
競合物件に築浅物件が多い
競合物件に築浅物件が多いときには、リノベーションをした方が良いです。なぜなら、築浅物件が多いということは、状態の良い物件と競合される可能性が高く、状態の良い物件と比べることもできるため、リノベーションした効果も高いです。
つまり、購入検討者に「築浅の物件を見たけど、築古でも室内はキレイ」と思われれば、築古の魅力である「低価格」が際立ちます。
共用部が劣化しているとき
また、築古マンションの共用部が劣化しているときも、リノベーションした方が良いタイミングです。築古マンションなので、ある程度共用部が劣化しているのは仕方ありません。購入検討者も劣化していることは覚悟しているでしょう。
しかし、その分室内をリノベーションして新築時に近い状態にしていれば、良い意味で「共用部とのギャップ」が生まれます。仮に、共用部も室内も劣化しているとアピールポイントがないですが、室内のリノベーションをしていればアピールポイントになります。
このアピールポイントは、購入検討者の「マンションを購入する理由」になるので、共用部が劣化しているマンションはリノベーションして売るべきです。
リノベーションしない方が良い状況
築古マンションでも、「状態が良い」、「立地的な価値が高い」というような状況のときには、リノベーションせずに売却した方が良いでしょう。
状態が良い
マンションの状態が良いときは、無理にリノベーションする必要はありません。上述したようにリノベーションも数十万円~数百万円程度の金額かかります。状態が良いのであればリノベーションする効果は薄れるため、わざわざ費用投下をするメリットはあまりありません。
立地的な価値が高い
また、そのマンションの立地的な価値が高いときも、リノベーションせずに売却するべきです。立地的な価値が高いとは、たとえば以下のような立地のマンションです。
- ターミナル駅が最寄りである
- 住みたい街ランキングに掲載されるようなエリアである
- 再開発された街である
マンションをはじめ不動産は「立地」が大切です。そのため、上記のような立地的な価値が高いマンションは、築古マンションでも人気がある場合が多いです。つまり、立地的な価値が高いマンションは、リノベーションしなくても売却できる場合があります。
まとめ
このように、マンションの築年数による価格推移などから、築古マンションはリノベーションした方が良い場合が多いでしょう。しかし、リノベーション費用が売却金額に上乗せできるかは分かりません。
そのため、最初から大規模なリノベーションをするのではなく、少額のリノベーションから始めた方が良いでしょう。その上で集客状況や検討状況をみて、その後のリノベーションを検討してください。